導入事例一覧
2024.04.24
山陰合同銀行様 導入事例のご紹介

クラウド共通基盤の導入により、ビジネスアジリティが大幅に向上データ分析基盤を活用しデータドリブンな経営を実現
山陰合同銀行は島根県と鳥取県を主な基盤とし、島根県松江市に本店を置く地方銀行。同行では「ITの活用により当行の全てをより良くし、競争優位を確立します」をキーワードにDX戦略を推進している。このDX戦略におけるデジタル戦略チャネルの位置づけでは競争優位性向上施策としてクラウド共通基盤とデータ分析基盤の導入を決定、その構築パートナーとしてシステムサポートを選定した。クラウド共通基盤にはMicrosoft Azureを選定、先進技術を活用した基盤の構築により、デジタル戦略チャネルのDX施策を実現している。またマーケティングオートメーション実現の施策としてデータ分析基盤を活用している。
稼働開始時期
2023年6月1日
ビジネスにおける課題と解決策
①ビジネス機会を逃さないためのアジリティ(俊敏性)やBCP(事業継続性)水準の低さ- パブリッククラウドを導入することでアジリティと可用性の向上を実現、データ分析基盤のベースとなるデータウェアハウスソリューションとシステムサポートの提案の親和性よりMicrosoft Azureを採用
- パブリッククラウド導入メリットを最大限に享受できるように、クラウドネイティブな構成を採用することでBCP対策を実現
- クラウド共通基盤としてネットワーク設定ルールの標準化を行い、サーバーやリソースの組込みに要する時間短縮を実現
- 事業継続に関わるデータは「Storage Accounts」の機能により遠隔地への保管、有事におけるデータの消失を回避
②特定ベンダーへの依存
- 継続的に手が加わるデータ分析基盤はアジリティと柔軟性を目的に内製開発を前提としたサービスを選定。Azureのデータウェアハウスソリューションである「Azure Data Factory」と「Azure Synapse Analytics」を採用することにより、データ分析に必要なETL処理をGUI操作で実現
- 「Azure Data Factory」、「Azure Synapse Analytics」を中心としたトレーニングを行うことにより内製開発を実現、これにより銀行主導による迅速なサービス提供が可能となった
③データ処理作業の冗長化やデータ不整合・誤謬リスクの解決
- システム開発に着手する以前にデータ不整合・誤謬防止を目的に、利用者が使いやすい一定のルールを「データマネジメント標準」として制定した。またデータ変換についても設計時に変換標準ルールを策定した
- データ処理作業としてETLに可用性の高いPaaSを採用、また耐障害性および冪等性を考慮したリトライ設計を行うことでデータ不整合を低減
- データ分析基盤内でのデータの「持ち方」として、データレイク、ステージング、DWH、DMの4層構造とすることで、分析業務上想定していないデータに対するリカバリ、再実行を可能な仕組みとした
導入ソリューション
クラウド共通基盤においては、Microsoftが提唱する「Azureランディングゾーンアーキテクチャ」に則ったハブアンドスポークネットワークトポロジを採用、これにより通信とセキュリティ要件の効率的な管理を実現している。またセキュアなネットワークが求められる金融機関ならではのクラウド利用要件は、オンプレ環境と専用線(Express Route)接続、およびPrivate Linkを使用しAzure上で閉域網を構築し実現した。
データ分析基盤では、Azureのデータウェアハウスソリューションである「Azure Data Factory」と「Azure Synapse Analytics」を利用することにより、スケーリングを可能とし、データのクレンジング、標準化を実現した。
インタビュー
(2024年2月に取材)
STS:貴社の事業紹介およびIT戦略やクラウドについての方針をお聞かせください。
山陰合同銀行 平井氏:山陰合同銀行は、島根・鳥取両県をはじめ、山陽、兵庫・大阪をカバーする広域な店舗ネットワークを活かし、皆さまの多様な金融ニーズに積極的にお応えしています。この金融ニーズに的確に応えるためのマーケティングオートメーションが今回導入したデータ分析基盤になります。今後もデジタル強化を推進、具体的には金融アプリの導入、AIの活用等お客様の利便性についての施策を検討しています。クラウドの活用についてはAPI基盤の構築などを考えています。
STS:クラウド(Azure)導入のきっかけとなった課題やエピソードがあればお聞かせください。
山陰合同銀行 増原氏:既存のデータベースはデータ追加時のルールが無く、用途が不明なテーブルや重複しているテーブルが多数存在し、運用コストの増大や利便性の課題がありました。具体的にはデータベースによって同一項目であっても桁型が異なっており、変換して利用する等の手間がかかっていました。またオンプレミスサーバーでは保有可能なデータ量に制限があり、必要に応じて必要な分だけ容量の拡張を行う必要がありました。データ分析基盤のマネージドサービスであるSynapse Analyticsの導入により、オンプレミスサーバーの運用管理にかかっていた手間から開放されたことを実感しています。
山陰合同銀行 平井氏:当行においてプライベートクラウドは構築済みであったが、仮想サーバーの基盤として用意したものであり、PaaSを始めとした最新のクラウドサービスの利用ができなかったことがクラウド導入のきっかけとなります。
STS:システムサポートを選択された理由や、他社と比較して採用の決め手となったポイントをお聞かせください。
山陰合同銀行 平井氏:マーケティング目標を早期に達成する必要があったため、本構築案件は納期の優先順位が高かった。金融機関におけるデータ分析基盤の構築実績を持たれ、高いノウハウに期待しました。コンペティションにおいて辞退した事業者もいた中で、如何に納期に間に合わせるかを検討いただけました。
山陰合同銀行 増原氏:導入検討時のQAに対してご担当者は真摯に対応いただき、その結果的確な回答をいただけました。また会社としても豊富なクラウド開発の実績や金融機関での開発実績を持たれている点を評価しました。
STS:クラウド共通基盤・データ分析基盤の特徴についてご紹介ください。
山陰合同銀行 平井氏:導入検討時から当行の内製開発を視野に入れており、クラウド共通基盤・データ分析基盤いずれも取り扱い易い環境になっています。クラウド共通基盤は銀行内のデータを安全に守るため、パブリッククラウドにもかかわらず閉域網として構築したのが特徴です。またマイクロセグメンテーションアーキテクチャ等も採用し、将来のゼロトラストに備えました。データ分析基盤においては、データカタログの作成、データマート作成ルールの定義、データクレンジングによるデータ型や桁数の統一、アクセス権限ルールの整備や自動付与の規定等、データマネジメントを行い利用者が使い易いように構築できました。
STS:クラウド共通基盤・データ分析基盤導入後の効果について、導入前と比較してどういった変化が見られたのかお聞かせください。
山陰合同銀行 増原氏:今回導入したデータ分析基盤は以前のシステムより集計処理が速いため、ユーザーから好評をいただいています。
山陰合同銀行 平井氏:設計段階でデータレイク、DWH、データマート等の各レイヤ単位に整理、データ処理を実装いただいたため、保守性が高く、万が一の障害においても対応が容易になったと感じます。
STS:導入前から現在に至るまで、STSのサポートに関する評価もお聞かせください。
山陰合同銀行 平井氏:まず要件整理段階においては、要件をしっかり確認されるベンダーであるという印象でした。機能要件、非機能要件が具体的に整理できました。構築段階においては、リモートでの開発が今回初めてであったため、当行の意図を汲み取ってもらえているか不安もあったが、最終的には仕様変更も含め、予定の開発を全てやり切っていただきました。エンジニアの皆さんの心意気に感激しました。リリース後も安定稼働に貢献いただいています。
山陰合同銀行 増原氏:要件定義、設計を進める中で、銀行が求めるセキュリティ要件では実現できないことや方法を変更する必要がある事象も出ましたが、都度粘り強く対応いただき、無事プロジェクトを完了させることができました。日々発生する課題や障害に対して迅速に対応いただいており、今では安定した稼働を支えるパートナーとして頼りにしています。
STS:貴行のクラウド共通基盤・データ分析基盤を活用した今後の計画などがあればお聞かせください。その将来に向けて、STSにどのようなサービスを期待しますか。
山陰合同銀行 平井氏:当行はデータ利活用を更に進め、更なるデータドリブンな経営を実現する会社になりたいと考えます。そのためにアプリ基盤やデータ連携基盤として一層の拡充をしていく考えです。
山陰合同銀行 増原氏:現在プライベートクラウドに存在するサブシステムのクラウド共通基盤へのリフトを実現するために、クラウド共通基盤における運用監視に関するコストを低減したいと考えます。またデータ分析基盤のさらなるデータHUBとしての活用を考えています。
インタビューにご協力いただいた方

平井 剛史氏(中央)
IT統括部 副部長(2024年2月当時)
増原 俊久氏(左)
IT統括部 システム開発グループ 副調査役
祝部 桐子氏(右)
IT統括部
お客様情報
企業名:株式会社山陰合同銀行
業種:金融業
従業員数:1,955名(連結)(2023年3月31日現在)
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